本日AM診の最後はおでこのできものの手術でした。

 

「もう10年以上も前からほってたんですけど、
近くになんやええクリニックができたからいうて(内科の)先生にすすめられて、、」
と受診されたかわいらしいご婦人です。

 

できものは前額部から頭髪生え際に到る皮下腫瘤で、
術前診断では脂肪腫が第一に考えられました。

 
腫瘤は縦長の楕円形で前頭筋下に存在する可能性が高いことを考えると、腫瘍の長軸に沿った切開の方がアプローチは容易でしたが、おでこの縦の傷跡は目立つ傷跡になりやすいため、おでこの横皺に沿った切開(この傷跡は上手に縫えばほとんどわからなくなります)からアプローチしました。

 

15番メスにて皮膚切開後、慎重に皮下を剥離していくと腫瘤により持ち上げられた前頭筋が姿を現しました。そこで前頭筋を切ってその下層に入っていかなければならないのですが、今度は皮膚切開と同じ横切開で切ると術野の展開は容易になるのですが、前頭筋への損傷が大きくなるため(=術後の前頭筋機能が低下する)今度は筋繊維の方向に沿って縦に前頭筋をさばいて(こうすれば前頭筋の損傷を最小限に抑えられる)さらに深層へアプローチしました。

 

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前頭筋を左右に分けるように前頭筋下を展開するとややオレンジ色がかった典型的な脂肪腫が顔を出しました。脂肪腫はカプセルと呼ばれる被膜に包まれているので後はカプセル上を剥離して切開線を拡大することなくen-bloc(腫瘍に切り込まずに一体のままでという意味の医学用語:腫瘍の切除ではen-blocに摘出することが再発を防ぐ上でも重要です)に腫瘍を摘出しました。

 

あとは止血を確認し洗浄したのち、
前頭筋>皮下>皮膚と解剖学的な層ごとに(これをlayer-to-layerといい形成外科的縫合の基本の一つです)縫合し手術を終了しました。

 

最初は緊張されていた患者さんも、「もう終わりましたよ」とお知らせすると、

「全然痛のうて、半分眠ってましたわ。ありがとうございました。」

とすっかりリラックスされた様子で元気に帰っていかれました。
今回は手術の様子を少し詳しく書いてみました。

 

形成外科 北山通り松ヶ崎クリニック(現:四条烏丸松ヶ崎クリニック)