お顔の輪郭の悩みの中でも最も多い相談の一つである「エラ」
一般的に「えら」と言われている部位は医学的には「下顎角部」と言われている部位に相当し、いわゆる「小顔」になるためのキーパーツです。
このスライドは日本美容外科学会の輪郭形成に関するパネルディスカッション(2011年)での私のプレゼンテーションの1枚ですが、下顎骨のグリーンで囲われれいるところが下顎角(英語ではMandibular angle)となります。
エラの張りだしは構造的に次の4つの要素で構成されています。
- 下顎骨(骨格):輪郭のベースとなる硬組織
- 咬筋(筋肉):下顎骨角部から頬骨にかけてつながる筋肉で咀嚼筋のひとつ。咬筋が収縮することにより歯をかみしめることができる。
- 脂肪:皮下脂肪
- 皮膚:envelope
この4つの中でもいわゆる「エラ」の大きな原因となるのが「下顎骨」と「咬筋」です。
BOTOX治療が普及するまでは「えら」の治療は主に手術しかありませんでした。私も実際に骨きりによる輪郭形成の手術を執刀していましたがこれは全身麻酔下に下顎骨(場合により咬筋も)を整形する手術で術後のダウンタイムも少なくなく、なかなか気軽に受けれるものではありませんでした。
ボトックス注射はA型ボツリヌストキシンの注射で咬筋の収縮を抑制することにより筋肉の肥大を改善し下顎角部のボリュームを減らしフェイスラインをスッキリ小顔に見せる効果があります。また特定の打ち方をすることにより(シンガポールの形成外科医 Dr Woffles Wuの開発されたレジメン)骨のリモデリングに影響を与えて骨格を小さくする効果を発揮する可能性が考えられています。(私もDr Wuのレジメンにそった投与方法により臨床的に手術に近い効果の得られるケースを少なからず経験しております)
>>以下にエラ(咬筋)へのボトックス注射による効果についてまとめます。
- 注射数日後より咬筋の収縮を抑制し、筋肉の収縮による下顎角部の盛り上がりを軽減します。
- その後、2〜3ヶ月にかけて筋肉を使わないことにより筋肉(咬筋)のボリュームが減少していきます。
- 特定の打ち方により長期的に筋肉の収縮が抑えられ、咬筋の付着部の骨面への負荷が減少することにより骨のリモデリングを介して骨格を小さくする可能性が考えられています。
実際に私も、ボトックス注射をするようになってからは下顎角部の骨きり手術をすることはほとんどなくなりました。咬筋の付着していない下顎前方の輪郭形成に関してはいまだ手術の必要なケースがありますが、現在エラの治療の第一選択はボトックス注入となってきています。
以上、形成外科医ならびに美容外科医としての長年の経験に基づく現時点での私の見解となります。
エラでお悩みの方、えらのボツリヌストキシン治療をお考えの方の参考になれば幸いです。
*次回、エラのボトックス注射(2):副作用と失敗を避けるための3つのポイント に続きます。
2016年9月8日
四条烏丸松ケ崎クリニック 院長
形成外科学会専門医 西村 雄
Pingback: 形成外科専門医と考えるエラのボトックス治療(2):失敗と副作用を避けるための3つのポイント | 四条烏丸 松ヶ崎クリニック | 【形成外科】【美容外科】【美容皮膚科】 | しみ・しわ