陳旧性顔面神経麻痺では顔面神経の主要な分枝のうち、細く他の分枝との吻合の少ない側頭枝の麻痺が残りやすい傾向があり、そのため眉毛下垂(および左右差)が多く見られます。
眉毛を拳上する前頭筋が完全麻痺に近い場合は、手術による眉毛拳上術が選択肢となります。
それに対し、前頭筋の機能がある程度残っている不全麻痺では症例ごとに細やかな対応が必要になります。
先日、新幹線にのって相談にお越しいただいた20代の女性、神経麻痺発症後2年間患側の瞼が重い感じになり、目が小さくなったと悩んでおられました。
診察してみると、前頭筋機能は50%程度残っており上方視時では明らかな左右差を生じるものの、正面視での左右差はわずかで、積極的に手術をお勧めする状態ではありませんでした。
しかし、患者さん自身にとってはそのわずかな眉毛位置の変化に伴う目元の印象がずっと悩みであり、ボトックスによる眉毛位置・形態の修正を試みました。
陳旧性顔面神経麻痺(ボトックスによる治療-2)へつづく