今回は患者さんの御好意により、実際の手術前後の経過を解説していきます。
30代後半の落ち着いた雰囲気のきれいな女性です。

10数年以上のハードコンタクトレンズの装用歴があり、
それに起因すると思われる腱膜性眼瞼下垂を生じていました。

特に左側は瞳孔の上半まで完全にまぶたがかぶっており、
代償性に前頭筋(おでこの筋肉)を使って上まぶたを持ち上げようとしているため、
眉毛が大きく拳上されています。

 

t02200122_0800044211148410250

 

 

 

 

 

右は一見左に比べると下垂は軽度に見えますが、
術前のチェックにて左眼瞼を拳上するとマスクされていた下垂が出現し右側もさらにまぶたが落ちてきます。(Herring効果)

したがって両側の眼瞼下垂手術が必要な状態でした。

 

術前のカウンセリングにて、

ご本人は周囲の人から指摘されるまで眼瞼下垂という病気だとは知らず、
年齢的にこんなものなのかなと思っていたという事でした。

また、肩こりや頭痛は特にひどいものはなく、
小さなお子さんがおられるのでできるだけ印象が変わらないように、
年齢なりの自然な状態にしてほしいとのご希望でした。

 

したがって手術のゴールとしてはゆるんでいる挙筋腱膜の正常な位置への修復をファーストプライオリティとし、
皮膚切除は行わず、
挙筋の前転についても20代の目にするような開瞼は目指さず、
過剰な矯正は控え年齢なりの目元になるよう自然な仕上がりを心がけました。

 

t02200287_0800104511148410252

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手術中、翻転した眼窩隔膜とともに挙筋腱膜を剥離同定します(赤矢印)
この挙筋腱膜を瞼板前面へ前転し適切なテンション(*)がかかる位置にて瞼板に固定します。

*実際には臥位・座位でチェックし、さらに反対側の挙筋を調整した後に、再度両側チェックし左右のバランスを調整します。

↑ここが手術のキーポイントで、一番神経を使うところです。
うまく左右バランスよく調整できれば腱膜のexpansionを使って重瞼線を固定し、止血の最終チェックをしたのち皮膚をぬって、

 

さあ、手術終了です↓

t02200123_0800044911148418804

 

 

ope終了直後

 

そして目を開けてもらうと↓

t02200101_0800036611148418797

 

 

ope終了直後開瞼

 

少し腫れが出てきてますが自然な感じで目が開いています。

 

t02200286_0800103911148437806

 

 

 

 

 

 

 

手術終了直後の側貌です(オーラがちがいます)
そして、術後4日目(抜糸時)の経過です。

t02200079_0800028611148423175

 

正面

 

t02200432_0757148511148429492

 

 

 

 

 

 

 

術後4日目

 

まだ腫れ・内出血ともに出ていますが眼の開きがよくなり、
それに伴って手術前には大きく持ち上げられていた眉毛がやや下降し、上眼瞼のくぼみもややマイルドになっています。

 

何より、解剖・生理学的に正常な本来あるべき状態、
一言でいえば、
そのひと本来の健康な美しさを取り戻すとオーラがちがいます。

 

手術直後より、
「こんなにものが見えるもんだったんだ。
視界がすごく広くなりました!」と喜んで頂け、
心配されていた目元の手術に伴うお子さんの受容も問題なく、
いい意味で「ほんとに手術したの」って言われるくらい自然な仕上がりですとのこと、

 

機能と形態の調和を常に考えて手術している形成外科医としては
最高にうれしい言葉です。

 

 

最後になりましたが、
ブログへの掲載にご協力頂きましたYさんに心より感謝いたします。

 
2011. 4月

北山通り松ヶ崎クリニック(現:四条烏丸松ヶ崎クリニック)

西村 雄